2024年6月
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2024.06.30
「――いいのよべつに。わたしも含めて、みんな好きにやれば。でもね、普通に話をしていていきなりそういうのを押しつけられるのはたまらないわよ。気分悪くなるもの。でもあの人たちは自分たちのことを『気づいた側』の人間だって自負していて、それが唯一のアイデンティティだから、それを黙ってら…
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2024.06.29
霞が関から有楽町まで歩いて行き、角川シネマで『蛇の道』を観た。ちょうど良くトークイベント付きの回で、終わったあとに監督の黒澤清ともうひとり誰だかが出てきて20分ほど喋ってくれた。『蛇の道』を僕は『悪は存在しない』の予告編で知って、黒澤清がどうやら濱口竜介の師匠みたいな人であるら…
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2024.06.28
外は土砂降りで家を出るのがなんとなく躊躇われたけれど、ふとナイターのチケットを見てみたら空きがあったのでそれを取って、外出する予定ができたので仕方なく午後の授業へ向かった。だから三田で授業を受けたあとに地下鉄で水道橋へ移動して、ナイターが始まる18時までの間は機械書房へ寄ったあ…
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2024.06.27
夜中、家に帰る道すがら、高齢の男性、こういう場合はどうやって形容するのがいいのだろうか、シニア、おじさん、お爺さんというほどでもない、「ダーツの旅」であったら「お父さん」と所ジョージに呼びかけられるような人だーーが何か言いたげな素振りでこちらに近づいてくるので、仕方なくイヤホン…
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2024.06.26
そうかい、じゃあ、と言ってから、サトウさんは黙った。ずいぶんと長い沈黙だった。初夏の風がわたしたちの間を吹き抜け、去っていく。ぶろろろろろ、と、遠くで車のエンジン音がして、ニセモノ、わたしはふっと、バス停の標識の向こうを見やった。青いナツミカンの葉と、未成熟なアジサイ以外は、な…
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2024.06.25
恋人と川沿いを散歩しながら帰る。風は少しあるものの生暖かく、歩くのには今夜くらいの気温が限界かもしれない。恋人が「夏のさあ、土? みたいな匂いしないね」と言うので「どうだろうねえ、蝉が鳴いてないからじゃない?」と僕は言った。ゆるやかな齟齬。そこはかとない不安。 今日はなんだか…
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2024.06.24
月曜。5限が休講になったので機械書房へ行くと、岸波さんは椅子に座って本を読んでいた。そんなものがあるのか分からないが、本の世界で生計を立ててゆくこと、独立系書店、個人出版、大手の編集者、いろんな人がいるけれど。そんなことを1時間ほど二人で話していただろうか。夢があるんだか無いん…
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2024.06.23
ショッピングモールの眼鏡屋に新しく作った眼鏡を受け取りに行くと「今日の朝レンズが入荷して……、まだ加工が済んでいなくて……」と申し訳なさそうに言われたので、ええ良いですよ1時間くらい待ちますよと答えたはいいが、本当に眼鏡を受け取りに来ただけのつもりだったので暇つぶし用の本が無い…
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2024.06.22
焼き物概論みたいな授業のレポートが今日までの締め切りで、やっべーと思いながら午後から取り掛かる。東博で展示されている焼き物を見に行ってその中からひとつ選んで論ぜよ、というやつで、だから水曜に見に行って選んだのは「白濁釉手付鉢」という名前の変な皿だった。これは四隅が丸いハンドタオ…
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2024.06.21
金曜。福尾さんの博論本が書店に並び始めたらしい、くまざわ書店の在庫を検索したら蒲田に入荷されているとわかったので、途中下車して買った。『非美学』は一応6月24日の発売ということになっていて、なんとなく6月24日、624、きりの良い数字だ、という組み合わせが頭の中にずっとあったが…
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2024.06.20
夜勤明け。3つも4つもセーフティネットを厳重にかけたアラームを一度も鳴らすことなく4時57分に目が覚めた。今日も朝から電車がたらたらたらたらたらたら走っていて間に合うはずの電車に乗ったのに4,5分の遅れをゆるやかに生み出し続ける京浜東北線大宮行きにキレそうになるかといえばそこま…
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2024.06.19
時間ギリギリに家を出るほうが悪いと言われれば元も子もないのだが、朝というか午前中の京浜東北線は本当に、ほんとうに、毎日5分から10分ほどの遅れ、許しがたい遅れをを持って運行されていて、さらに言えば「今日は珍しく遅れてないぞ」と思って乗り込むと、たいてい蒲田のあたりを走行中にぐぐ…
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2024.06.18
この日記だけ読まれていると、僕がずいぶんと愉快な日々を過ごしているように思われそうだし、僕のほうでもたまに読み返すと、実は自分が楽しい毎日を送っているんじゃないかと思ってなんだか怖くなる。このあいだ、坂口恭平『生きのびるための事務』を読んでなにやらこれは凄いものを読んだ、革命だ…
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2024.06.17
厭でもキャリアプランというか、この先の人生について考えざるを得ない。たしかにここ3、4年くらいふらふらしていて、大学に通ってはいたけれど先のことを一切考えられなかったし、そんなものは存在しえないとも思っていた。現実感を甚だしく欠いていたのである。自分が過ごす/過ごしたであろう時…
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2024.06.16
早々に辞して横浜へ帰る。出掛けに軽トラがやって来て、義伯父おじさんがビニール袋いっぱいの曲がったキュウリを届けてくれた。婆さんも同じようにキュウリを、それもU字にひん曲がったやつをいっぱいに捥いでくれて、それもありがたく貰った。帰りは中森明菜。高坂で父親に運転を交代してあとは寝…
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2024.06.15
5時半起きで車を走らせ、海老名から八王子、鶴ヶ島、前橋、伊香保、赤城、水上、と今日は祖父の一周忌なのであった。車中では退屈であろう両親に気を遣って、80年代の邦楽ベスト的なプレイリストを流していた。伯母の家にお土産を起き、父の実家で伯父夫婦と合流したのち喪服に着替える。真夏日と…
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2024.06.14
身近なところで戦争があり、街角で人が銃に撃たれて死んでゆくイメージの夢、このあいだ三田の、一号館の柱に「SAVE GAZA」の手書きの貼り紙がしてあったことを思い出す。昨晩薬を飲まずに寝たせいだろうか、覚醒した瞬間の気怠い感じがあり、それは今まで無理矢理抑え込んでいたものが見え…
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2024.06.13
飲んだあとでないと日記を書けない、困ったものだ。帰りの電車の中で3、4日ぶんのを一気に書く、酔っ払ったから一気に書ける。隣には恋人が座っていて、僕らのポッドキャストをイヤホンで聴いている。今日は夕方から授業だったけれど運良く5限が休講になったので、ワカオくんと水道橋へ行きバッテ…
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2024.06.12
佐藤くんから「着きました! 東改札前の柱を8の字に周回してます」というLINEが来たので、どこの柱だろうと思って見にいくと、そのとおり八の字に柱の周りを歩いているワイシャツ姿の彼が居た。前に会った時よりもだいぶ胸板が熱くなったように見え、浅黒い顔もより精悍な顔つきになったように…
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2024.06.11
ゼミの合宿が式根島になるかも、とのことで(結局ならなかった)、式根島のいい民宿しらない? と石井に連絡したらいくつか良さげなところを教えてもらえ、ついでに本郷で講義を受けている最中ということが知れたので、「今からそっち行くわ」と強引に約束を取り付けて会った。髪が長い。箕輪厚介み…
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2024.06.10
下高井戸シネマで三宅唱の監督作品が一挙に上映されるということで、今週は映画を観まくる週になることが予期され、実際月曜からその通りになった。とはいえ昼の講義が終わってから夜の上映までまとまった時間があったので、これまた別の映画を観ることにする。六本木ヒルズ、昼下がりのシネコンは閑…
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2024.06.09
恋人と待ち合わせて上野の科博へ。「大哺乳類展3」と題された展示を見る。ほ乳類、哺乳類、ほにゅう、哺乳、ホニュウ、といえば月曜5限の美学概論の先生だ。何かとなにかを説明する時に(でもなんの説明だったかひとつも思い出せない)「ワンワン鳴いて、脚が4本生えてるホニュードーブツといえば、…
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2024.06.08
今読んでいるのはジョニー・オデル『何もしない』で、これはだいぶ前に早川から単行本が出ていたのを買って一度読み、読んだまま部屋の本棚に仕舞われていたのを、さいきん吉祥寺の古本屋「百年」がツイートで取り上げていたのでふたたび開いてみようという気になり、それは「百年」が「いまの『就職…
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2024.06.07
研究室棟の待合に着くと先生はまだ来ておらず、ソファに座って来訪を待つことになった。とはいえ学生の出入りがほとんどない場所で、ラフな半袖に大きなリュックサックの奴がソファにふんぞり返っているのも妙かと思い、立ち上がって掲示板に貼られているものを眺めているふりをしていた。大学が開催…
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2024.06.06
開設したポッドキャストにさっそくお便りがあって嬉しい。「梅雨の憂鬱を忘れられるようなオススメの本を教えてください!」とのことで、僕としてはまだ梅雨の心地ではなかったが読書という行為とメランコリックな心持ちが密接に結びついていることに変わりはなく、それを忘れられるような爽快な本と…
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2024.06.05
今日はたしか補講日で昼の授業はなかったはずだから急いで身体を起こす必要はないことを思い出し、それでも確証が持てなかったので枕元に転がっているiPhoneを探り当ててから「三田 文学部 履修案内」と検索して学事のカレンダーを見にゆき、たしかに授業がないことを確かめた。それで寝た。…