2024年5月
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2024.05.18
医者は白髪に髭のお爺さんで、こちらの目を真っ直ぐ見ながら3、4つのことを訊いてくる。ときおり僕の言ったことに対して「なんだって? わからないな」というような表情を作るので、耳が遠いのだろうということを察してからは、簡単な言葉を使って、大きな声で答えるようにしている。それが台本を…
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2024.05.17
寄せ書きは書いた。書かずに次へ回そうとしたけど、すでに埋まっている分の言葉たちの白々しさに笑ってしまって、それから腹が立ってきて。真摯な言葉にしろふざけた言葉にしろ、裏には何か絶対で大きなものへの信仰が見えた。揺らぐことのない不動の何かをミリも疑わない、日常を生きる者の無邪気さ…
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2024.05.16
「東京か、東京以外か」という二項対立をワカオくんは最近よく使う。映画で言えば『夜明けのすべて』も『悪は存在しない』も、象徴としての「東京」的なものと、広い意味での「東京」以外、それは空間としての地方にかかわらず、カネや華々しさの競争が存在しない場所、を描いたものであり、たとえば…
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2024.05.15
先のことが考えられないんです。計画とか、目標とか、ないんです。考えられないんです。わからない、というか無い、本当にどうでもいい、その日、その時にやりたいことを衝動的に、といっても本を読んだり映画を観たりしているだけですけど、そんなんじゃだめなんだと思いながら、いや、そう言うと羨…
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2024.05.14
もともと寝覚めは良くないほうだが薬を始めてからさらに起きられなくなり、6時ごろに目が覚めてもスマホで時間を確認するのがやっとのことで一瞬にして深い眠りに引き戻される。昼頃、玄関のほうから人の喋り声が聞こえたのでようやく目が覚め、僕宛の荷物が届いたことが知れて重い身体を起こすと、…
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2024.05.13
「知ってる? 煙草って、火をつけるのがライターかマッチかで味が全然違うんだ」と彼は言って、僕は「そんなことある? ジッポーでもガスコンロでも変わらないだろう」と訝しんだ。彼は普段は吸わないが、付き合いで吸うことになったときの為にマッチだけは持ち歩いているらしい。あまりに粋が過ぎ…
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2024.05.12
昼の11時ごろ自然と目が覚めて、効いている――と思った。後頭部のほうをずっと何かに引っ張られているような感覚があり、それは決して心地よいものではない。NaSSAの副作用として眠気やふらつき、食欲増加があることは聞いていたが、それどころではない、全てを眠気というか倦怠感に支配され…
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2024.05.11
初台。働き終え、窓際の席でまかないのカレーを食べながら、これを食べ終えたらようやく「夕食後」だと思った。昼間に診てもらった医者は気のよさそうな白髪の爺さんで、口にする言葉のひとつひとつは何かの大仰な演技のようで僕は話が通じている気がしなかったが、それでも薬を使ってみようか、とい…
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2024.05.10
本を選んで、それについて喋るポッドキャストをやったら面白いのでは、という話をワカオくんとしていて、初回は最新号の「新潮」掲載作のどれかにしようということになった。何も考えられない、ノートパソコンの画面に向かって日記のエディタを開いても側頭部を締め付けられるような感じがある。
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2024.05.09
浅い眠りで明け方に目が覚めたので三田。今日は急に冷え込んで寒く授業中もずっと革ジャンを着ていた。木曜5限は創作の授業で、いいかげん僕も小説を書かなければいけない。小説、創作、評論、批評、批判、否定。自己検証、自己批判。自己嫌悪。ワカオくんと渋谷へ。『悪は存在しない』は僕は2回目…
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2024.05.08
日付が変わってWILYWNKAのアルバムがリリースされたのでひと通り聴いたあと、半分ほど残っていた『日本のいちばん長い日』を最後まで観、宮城事件と玉音放送についての記事を読みながら寝落ちした。3時半くらいだったか。そういえば昨日読んだ千葉雅也『プロンプト』には、「語り手の男が嘘…
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2024.05.07
歩いていると対岸の歩道にしゃがんでいる人が見えた。日中はたまにバスも通るような生活道路である。歩道の向こうは金網を隔てて大きな遊水地になっているから近所の人が道端の草むしりでもしているのだろうと思ったら、ピンク色のランドセルを背負った女の子がこちらを向いて座っているのだった。彼…