2025.04.16

叔母の家に連れて行ってくれと母親が言うので、車に乗せて会いに行った。引っ越したばかりの叔母の家は、二人暮らしにしてはだいぶ広かった。一部屋くらい、せめて納戸だけでも借りられるんじゃないか、本を置かせてほしい。義叔父さんは几帳面な本の虫で、買った本全てに皺ひとつなくブックカバーをかけて本棚に収めている。どれがどの本だか分からなくなるのではないか。むかし、僕が中学生の頃だろうか、司馬遼太郎とか「孫子の兵法」なんかを貸したら、たいそう喜んで読んでくれて、一年くらい返ってこなかった。母親と叔母は仲が良く、中年姉妹の会話に僕が割って入る余地も気力もなかったので、立派なマグに入れてもらった薄いインスタントコーヒーを啜りながら、窓の外で揺れる新緑を見ていた。帰りしな、若葉台団地のブックスタンドに寄って、「10分で選ぶから10分後に会おう」と母親に宣言してから本棚をざっと眺め、4冊買った。あまりにも選書が良すぎるうえ、古本も充実していて、町の本屋としてもしっかり機能している。申し分がない。徒歩圏内にあったら毎日入り浸っているだろう。夜は働いた。