果たしてこの生活で本当にやっていけるのか知らない。来月になれば授業が始まる、卒業論文も書かなければいけない、それなのにどうして、と問うてもおのれで始めたことではあるのだが、どこか何か間違えているような気がしてならない。思うように文章が書けないことと本が読めないことを抜きにすれば生活はそれなりに楽しいというか、いかにして昼間の退屈を凌ぐかではあるのだが如何せん金がかかる。あんまり金は使いたくない。昨日は珍しく石井が連絡してきたので午後から市ヶ谷で会って、釣り堀で鯉釣りをした。恥を忍んで書くが昔から魚が怖い。だから竿にかかった鯉をタモで引き上げるところまでは良いとして、そのあと、片方の手で鯉を地面に押さえつけて暴れるのを制して、優しく針を外してやったあと釣り堀に放流する、という一連の流れを全部石井にやらせた。やってもらった。総じて生き物は怖い。一定以上の大きさの虫もそうだけれど、自分の手に負えないから怖い。石井は趣味でダイビングをやっていて銛突きなんかもするらしいから、というか修士で海洋生物の生態学を研究するくらいだから魚類には当然慣れっこで、コンクリートの上でのたうち回る真っ黒い鯉に「もう~暴れんな暴れんな、可哀想に」と同情するような声を掛けながら、ひくひくと虚空に吸い付こうとする口に右手の人差し指を突っ込み、丁寧にU字の針を外していた。釣りといえば先月ワカオくんに海釣りに誘われていたところ中止になったので、行かなくて本当に良かったと思う。他人の釣りを見ているぶんには楽しい。竿を垂らしてぼうっとしている時間も楽しい。
新しいトートバッグが欲しかったので新宿の紀伊国屋本店でアートブック用のを買った。クリーム色に青のストライプ、書店のロゴ。頑丈そうでなかなか良い。それから午後をどこで過ごすか迷い、金のかからない場所ということで結局三田へ行った。交差点の近くの、新しくできたビルの1階に「ボナパルト☆ブルー」という名前の安っぽいフランス料理屋ができていた。