やかましく鳴るシャッターをがらがらと降ろして鍵をかける。それを茶封筒に入れて、シャッターの隙間から店の中の、もう届かないだろうというところまで突っ込むと、今まで過ごしていたはずの空間が一気に他所のものに思えた。最後にドコモタワーでも拝んでおくかと、真っ暗な階段を上がって屋上に出ると、もう眼前に紫色の光はなく、とっくに消灯したようだった。3時半になっていた。段ボールを抱えて車に戻り、駐車料金を支払って、『シンドラーのリスト』のサウンドトラックを爆音で流しながら東名を全開で走った。横浜青葉のあたりで空がなんとなく青みを帯び始め、道路の先に明るい星が目に留まった。金星だろうか、と思った。
起き、三田へ。午後の授業を適当にやり過ごすと夜になっていた。南館の図書館に降りて、巨人戦を流しながらあれこれ考えごとをしはじめたが、田中将大が初回から炎上したので観る気をなくし、どうせこんなところに篭っていても何ひとつ面白いことはないんだ、と思い直して高輪まで歩くことにした。正門を出たところにアイザワくんと彼の恋人がいたので、後ろから声をかけて少しだけ話した。第一京浜をしばらく歩くと高層ビルが左手に見えてきて、街びらきが行われたとはいえまだまだ再開発の途中であるようだった。高輪ゲートウェイ・シティの空虚さとビルのファサードと私怨の話はまた今度書くことにする。そのまま町田へ。かつての部活の顧問と先輩たちに合流して終電まで飲んだ。高校同期が母校で教鞭を取っているらしい。「ええ、あいつがですか!?」とつい声を大きくしてしまった。