霞が関から有楽町まで歩いて行き、角川シネマで『蛇の道』を観た。ちょうど良くトークイベント付きの回で、終わったあとに監督の黒澤清ともうひとり誰だかが出てきて20分ほど喋ってくれた。『蛇の道』を僕は『悪は存在しない』の予告編で知って、黒澤清がどうやら濱口竜介の師匠みたいな人であるらしいということも何かで読んでそれで気になっていたのだけれど、如何せんポスターの「いかにも死体を運んでいます」というような寝袋であるとか、血の付いたナイフを振りかざす柴咲コウだとかで「これはとんでもなくグロテスクな映画なのではないか」と怖気づいてしまって、僕は度を越したグロは受け付けないので覚悟しながら観た。そうしたら何だか展開も相まって「いつグロ・シーンが出るか」との戦いみたいになって、主観ショットはもちろん、病院の中で精神科医役の柴咲コウを追従するようなショットだとか、そこからパンしてドアの中に入っていくだとか、あとは柴咲コウの自室をルンバが這ってゆくシーンだとか、ひとつひとつをものすごく勘ぐりながら観てしまって、始終緊張していた。結局、血が流れるシーンはあるにせよほとんどが銃によるもので、銃で人が死ぬぶんには耐性がかなりあるから助かったというか、それで言えば北野武の『首』のほうがあまりにも残酷で、終わってからワカオくんに「観たよ」とLINEをしたらワカオくんもあとで観に行ったらしく「つまんなかった」と一蹴された。