先のことが考えられないんです。計画とか、目標とか、ないんです。考えられないんです。わからない、というか無い、本当にどうでもいい、その日、その時にやりたいことを衝動的に、といっても本を読んだり映画を観たりしているだけですけど、そんなんじゃだめなんだと思いながら、いや、そう言うと羨ましいとか言われるんですけど、そんなの現実逃避でしかなくて、なんにもならなくて、なんにもならないのに、それですら精一杯なんです、その日暮らし、とでも言うんでしょうか、――と僕は言った。
銭湯の洗い場でぼうっと意識を散らしていると、思考体力とでも言うのだろうか、考えがなにか邪悪なものに阻害されずに持続できる感じがあり、そうするとやはり効いているのかも、という期待のもと、文筆、制作、学業、就職、今やるべきこと、抱えているものが樹形図のように構造化されてゆくイメージが投影された。どこへ? どうでもいいということに変わりはないが、今までは遮断されていたその思考回路というか体力のようなものが決して早くはないけれど、それでもなくならないように持ちこたえることができて、これこそが大抵の人の真っ当な状態なのかと感動すら覚えた? 本当に?