ワカオくんに呼び出されて新宿へ。鬱々としたまま中島義道を読みながら小田急線。12時ちょうどに中央公園のスポーツコーナーで、ということになっていたが、僕が10分ほど遅れた。キャッチボール。スポーツコーナーというのは地面が一応は砂になっているものの、お世辞にもグラウンドとは言えないほど狭い、金網で囲われただけの小さな空間だった。サッカー少年の集団とキャッチボール少年たちと硬式テニス壁打ちおじさんが窮屈そうに、しかしお互いを気にすることなく奔放にボールを操っていて、僕はこういう場では気後れしていまうのだけれど、ワカオくんは構うことなく強い球を投げ込んできた。このまえ、ワカオくんにストレートの正しい握り方をようやく教えてもらって、今日はカーブも教えてくれたけれど今は忘れた。投げる、取る。どうしたの、球に邪気がこもってるよ、と見抜かれたので、昼飯を食べに入った紀伊国屋の地下のスパイスカレー屋であれこれ話した。
ワカオくんの恋人がもうすぐ誕生日で、プレゼントにeteのアクセサリーを買いに行った。ルミネエスト店は改装中だったので高島屋へ。ワカオくんは新宿に明るく、地下街を迷わずにすいすい歩ける。しかし店員が話しかけてくるような店に入るのが苦手らしく、ずっと古着屋に入れなかったのを一年くらいかけて克服した、と何かで書いていたほどで、だから今日も、高島屋の一角でガラスケースの向こうに店員のお姉さんが二人暇そうにしているのを遠巻きに見て、あからさまに尻込みしていた。有無を言わせず連れていき、店員さんにいろいろ聞いたら裏からいろいろ出てきて面白かった。あれこれ見せてもらいながら散々迷って、ピンクゴールドの小ぶりなイヤリングに決まった。キャッチをあらかじめ付けておくか訊かれて、(僕もどうやって使うのかよく分かっていないが)「えっと、僕が付けてあげるってことですか?」と言っていたのでウケた。