商店街の小さな横断歩道を堂々と渡っていたら、加速しながらやってきたタクシーに急ブレーキを踏まれ、てめえふざけんじゃねえよ、と、どうせ言っても聞こえないだろうから口パクで怒りを表明した。フロントガラス越しに、不貞腐れた表情のおっさんと目が合ったので、タクシーが再び速度を上げるまでずっと目を合わせていた。歩行者優先だろ、明らかに見えてんだろ、わざとかよ喧嘩売ってんのか、そんなのが二種免許かよ危ねえんだよ、といくらでも怒りたかった、そういうのがずっと消えないまま腐ってゆく、どんどん醜い顔になってゆく。サウナに行ったらちょっとは汗として流れゆくんじゃないか、あるいは水風呂に溶けたり、冬の夜空に蒸発したりするもんじゃないか、と微かな期待をようやく抱きはじめるのは夜遅くになってからで、いくら連休中とはいえ、日付が変わる頃には空くだろうと高を括っていたら、見たことないほど並んでいた。靴を脱ぐこともなく駐車場へ引き返して、来た道を40分かけて戻った。