2024.01.24

トレッドミルに飽きたので、ジムを出て河川敷を走った。暗闇の中で白いものが水面をなぞるように低空飛行しているのが気になって、足を止めると向こうも岩場に止まった。鷺だった。しばらくじっと眺めていると、もう一羽がすうっと同じ岩場にやってきてぎゃあ、ぎゃあと鳴き出した。シャワーを浴びて帰り『断腸亭日乗』。多くを語らず〈イベントレス〉な一日の中で一場面だけを切り取る。書けば書くほど野暮にもなろう。

十二月卅一日。晴天。午後市中大晦日の景況を見むとて漫歩神田仏蘭西書院に赴き、フロオベル全集中尺牘せきとく漫筆の類数巻を購ふ。風月堂にて晩餐をなし銀座通の雑沓を過ぎて家に帰る。枕上コレット・ウィリイの小説『レトレート・サンチマンタル』を繙読して覚えず暁に至る。突然格子戸を引明けむとするものある。起出でてみるに郵便脚夫の年賀状一束を投入れて去れるなり。表通には下駄の音なほ止まず。酔漢の歌ひつつ行く声も聞ゆ。

永井荷風『摘録 断腸亭日乗 (上)』岩波書店 1987 P34 ※1919(大正8)年12月31日

ストリーミングのアプリにクラシックだけを集めた機能が追加された。懐かしくなって、昔練習したベートーヴェンのソナタなんかを手遊びに弾いた。晴天。夕方横浜で旧友と会う。酒を買って港沿いを逍遥し、大桟橋に至る。